見慣れているはずの自分の部屋の様子が何か違って見えたり,いつも通る街の景色がどこか異なっているように感じたりしたことはないでしょうか。心当たりがあるなら,その瞬間あなたはきっと亜空間と出会っていたのだと思います。

インターネットで "亜空間" を検索にかけると,おびただしい数のしかも様々な分野のホームページに行き当たるのに驚かされます。評論,詩,画廊,SF,……。どれも,個人の思いのこもった空間であったり,遙か彼方の宇宙空間を指したりと特別な思い入れのある空間という意味で亜空間という言葉が用いられているようです。このサイトでは,目の前にありながら,いつもの見慣れた空間とは異なる空間の現象を主に取り上げます。そして,この新しい空間を「亜空間」と呼びます。亜空間は日常の空間とまったく同じ場所に潜んでいるのですが,たとえそれが目の前に現れたとしても,簡単に無視されほとんど気づかれることはありません。"潜んでいる"といっても,何かの陰に隠れているわけでも姿を誤魔化しているわけでもありません。普段の生活の中ではなかなか気付きにくいだけで,いつも身の回りにあふれています。ところが,何故かこれは意識が見過ごしてきたものなのです。

亜空間は通常の感覚器官,主に視覚を通して感知されるもので,決して,想像の産物ではなく,まして,霊や魂の類や第六感や気配といったもの,あるいは,幻覚などによるものを指しているのではありません。また,滝に打たれるような修行を積まないと身に付かないといった特別な能力が必要なわけでも,徹夜明けのような特殊な状況でないと体験できないということもありません。ごく普通の生活の中で見いだすことができるものばかりです。亜空間は,心理学や錯視の本に載っている直線が曲がって見えたり,長さが異なると思った2本の直線が実は同じ長さだったりする図が表すものとも異なります。こういった錯視の図も人の持つ感覚の不思議さを体験できるという意味ではおもしろいところもあるのですが,亜空間では対象にしていません。亜空間は身の回りに普通にある日常の空間そのものを対象にしますので,錯覚を起こさせることを意図して作られた図や作品などは基本的に扱いません。

亜空間が姿を現したことに気づいたなら,その世界を崩さないように慎重に見守る必要があります。亜空間は非常に繊細でこわれやすく,ちょっと油断するとすぐに日常の空間が幅を利かせてそこを占めてしまうからです。しかし,興味を持って見続けると,亜空間はその存在を強く主張し,見ている者に魅惑的な空間を提供してくれます。このサイトでは数多くの例を挙げて亜空間の現象を紹介していきます。次第に亜空間というものをとらえていただけるものと考えていますが,亜空間は体験してはじめてわかるところが多く,どの現象も実際に是非試していただきたいと思っています。文章や写真から想像したものとは比べものにならないほどすばらしい世界にきっと出会えるでしょう。

亜空間については数年前に出版した『亜空間』<日常に潜むもう一つの空間>(行路社)という書物に著していますが,このサイトでは本で扱った現象をさらにやさしくていねいに解説していきます。また,そこに載せなかったものや最近発見した現象も取り上げていくつもりです。

亜空間はいたるところに潜んでいて,あなたがその扉を開くのをじっと待っています。